医療機関にとって災害時の診療継続は、地域の命を守るための最重要課題です。本記事では、実際の導入事例を踏まえながら、医療業界が取り組むべきBCP対策のポイントをわかりやすく解説していきます。
福岡県済生会福岡総合病院は、災害拠点病院として被災時にも診療を継続する使命があります。そのため、最優先の課題として「参集可能な人員の確保」を掲げており、災害時の安否確認体制に改善が必要でした。以前利用していたシステムはメール連絡のみで通知漏れが多く、訓練時の回答率も60%台にとどまっていました。
そこで同院は「安否確認サービス2」を導入。メール・アプリ双方で通知できる体制を構築し、自動送信機能により災害発生と同時に一斉連絡が可能になりました。導入後の訓練では回答率が95%まで向上し、管理側の作業負担も大幅に軽減されています。加えて、月1回の無予告訓練や行政参加型の災害訓練にも活用され、運用面でもBCPの実効性が高まっています。
大規模な医療機関でもスムーズに導入できた点や、1,000名規模の職員情報を効率よく管理できる点が評価されています。
日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院では、災害時の人員確保と情報伝達体制を強化するため、従来のメール型安否確認システムからオクレンジャーへ移行しました。スマートフォン利用の拡大によりメールの到達率や回答率が低下していたことが背景にあります。
専用アプリを採用したことで訓練時の回答率が向上し、災害時に必要なマンパワーの確保や勤務計画の立案に役立つようになりました。また、正確な情報収集が可能となり、病院として求められる安全配慮義務の実行にもつながっています。今後は平時の情報共有ツールとしての活用も視野に入れています。
地方独立行政法人市立吹田市民病院さまでは、急性期医療を担う地域の中核病院として災害時の医療提供を継続するため、BCP対策の一環として安否確認システム「ANPiS」を導入されています。従来は部署ごとの連絡網を使って安否確認を行っていましたが、情報の途切れや担当者の負担といった課題があり、災害発生時に自動で情報配信・集計ができる仕組みが求められていました。ANPiSは気象庁との連携による自動配信や双方向通信、LINE配信など多彩な機能を備え、低コストで導入できる点が評価されています。
導入後は説明会や訓練を通じて職員への浸透を図り、初回訓練では80~90%の返信率が得られました。収集した情報をエクセルで管理できる利便性も高く、将来的には通常業務への活用も検討されています。
医療機関がBCPを策定し運用していく際には、一般的な企業の対策とは異なり、患者の生命維持に直結する設備や情報の管理など、多角的な視点を持つ必要があります。ここでは特に重要となる3つの対策ポイントについて解説します。
災害発生時においても医療提供を継続するためには、まず医師や看護師、コメディカルスタッフが現場に到着できなければ始まりません。そのため、夜間や休日を含め、緊急時に全職員と確実に連絡が取れる連絡網の整備が不可欠です。しかし、単に連絡がつくだけでは不十分であり、本人だけでなく家族の安全が確保されているか、交通手段が途絶えた場合に徒歩で参集できる距離にいるかなど、具体的な状況を把握する必要があります。平時から参集基準を明確にし、職員が迷わず行動できるルール作りを進めるとともに、定期的な訓練を行って実効性を高めておくことが求められます。
病院内には人工呼吸器や透析機器など、電力や水の供給が止まると直ちに患者の生命に関わる医療機器が数多く存在しています。そのため、停電時に備えた自家発電設備の整備は当然のことながら、燃料の備蓄も含めて最低でも72時間は自立稼働できる体制を整えておくことが望まれます。また、断水対策としての受水槽の耐震化や井戸の設置に加え、医薬品や医療ガスの供給がストップしないよう、複数のサプライヤーと協定を結んでおくことも重要です。供給ルートを多重化し、物流が寸断された場合でも必要な物資が届く仕組みを構築しておくことが、医療崩壊を防ぐ鍵となります。
電子カルテシステムが普及した現在の医療現場において、システムダウンは診療機能の停止を意味します。自然災害によるサーバーの破損や水没に備え、遠隔地のデータセンターやクラウド上へのバックアップを定期的に行う対策は必須といえるでしょう。さらに近年では、医療機関を標的としたランサムウェアなどのサイバー攻撃が急増しており、これもBCPにおける重大な脅威となっています。災害対策だけでなく、ウイルス対策ソフトの導入やネットワーク監視の強化、不審なメールを開かないための職員教育など、情報セキュリティ面での備えも同時に進めていくことが、現代の医療BCPには欠かせません。
医療業界におけるBCP対策は、単なる法令順守の枠を超え、患者の尊い命と地域医療を守るための生命線といっても過言ではありません。安否確認システムの導入による人員確保の徹底はもちろん、電気や水といったライフラインの確保、さらには情報の保全など、多岐にわたる対策が求められます。すべての対策を一度に完璧にすることは困難かもしれませんが、まずはできることから着実に対策を進め、定期的な訓練を通じて計画を見直していくことが大切です。
BCPツールは、災害発生時に早期復旧できるような仕組みづくり・体制づくりに役立ちます。とはいえ「いろんな種類がありすぎて選べない!」という方も多いでしょう。ここでは、おすすめのBCPツールを3つの目的別にご紹介します。導入を検討している方は、自社の目的と照らし合わせながらチェックしてみてください。

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