2024年度から介護事業所におけるBCP(業務継続計画)策定が完全義務化されました。本記事では、介護現場特有のリスクに対応するための具体的な対策事例や、実効性を高める策定のポイントを解説します。
介護老人保健施設「菜の花」では、職員参加型のBCP策定と運用を推進しています。マインドマップを用いた検討により、全部門の具体的対策を網羅。会議室への掲示と付箋による随時更新の仕組みで、全職員が当事者意識を持つ環境を整えています。また、自治体や近隣住民との共同図上訓練を重ね、地域一体となった受援体制も構築。実効性を追求し、訓練を通じて課題を抽出し続ける「動くBCP」の好事例といえます。
ケアハウスふれあい母恋は、過去二度の長期停電の教訓を活かし、エネルギー確保に重点を置いたBCPを構築しています。既存のハイブリッド車や消火用発電機を改造・転用し、停電時もナースコールや暖房等の生活基盤を維持する体制を整備。燃料の優先供給契約も締結済みです。また、避難訓練と連動した実働訓練を通じ、職員の不安を吸い上げて備蓄品や手順を改善するPDCAを確立しています。2018年の震災では外部支援なしで3日間の自力継続を達成しており、被災経験を力に変えて「動くBCP」へと昇華させた、極めて実践的な事例です。
合同会社アズマでは、東日本大震災の被災事業者から現場混乱や事後対応の課題を学んだことをきっかけに、防災意識を高め、簡易的なBCPの策定に着手しました。その後、コロナウイルス感染症の流行とBCP策定義務化を受け、実効性を重視した本格的なBCPへと発展させています。文字中心で浸透しにくかった従来のBCPを見直し、イラストや自社施設で撮影した動画、QRコードを活用した「可視化できるBCP」を構築しました。これにより職員の理解と対応力が向上し、クラスター発生時にも混乱を抑え、短期間での収束を実現しています。
介護サービスげんき企業組合では、東日本大震災で多くの介護施設が被災した教訓を受け、防災意識を高め、BCP策定に取り組みました。南海トラフ地震への懸念から、代表者自らが専門研修を受講し、外部専門家の支援を得て全8回の研究会を実施。利用者と職員の安全を最優先とした計画を策定し、重要事業の特定や復旧目標時間の設定、初動対応手順の整備などを行いました。策定後は研修や訓練、年1回の点検を継続し、防災意識の定着と行動変容を促進。経営資源を守り、災害時の早期事業再開を目指す実践的なBCP事例です。
介護現場でのBCPにおいて最も考慮すべき点は、利用者の要介護度や身体状況に合わせた対応を検討することです。自力での避難が困難な方をリスト化し、緊急時に誰がどのように搬送をサポートするのかを明確にしておく必要があります。また、人工呼吸器や吸引器を使用している医療的ケア児・者の場合は、停電が命に関わるため、蓄電池や発電機の確保が最優先事項となるでしょう。災害時には限られたリソースで対応しなければならないため、トリアージの概念を取り入れ、サービスの提供順位をあらかじめ決めておくことが重要だと考えられます。
災害発生時に迅速な対応を行うためには、職員の安全確保と、誰が現場に駆けつけられるかを即座に把握する体制が欠かせません。日中だけでなく、夜間や休日など職員数が少ない時間帯を想定した初動アクションカードを作成し、迷わず行動できる環境を整えておくことが望まれます。職員が自分の家族の安全を確保した上で業務に当たれるよう、家庭の安否確認を優先するルールを設けることも、心理的な負担を軽減するために有効です。自動安否確認システムを導入し、情報の集約を迅速化させることで、その後の人員配置の判断をスムーズに行えるようになります。
電気、ガス、水道などのライフラインが停止した状況下でも、介護サービスを継続するための準備が求められます。最低でも3日から1週間分程度の食料や飲料水を確保し、あわせて簡易トイレや衛生用品のストックを適切に管理することが大切です。特に介護現場では、おむつや清拭剤、とろみ剤といった代えのきかない消耗品が多いため、在庫切れを起こさないようローリングストック法などを活用して運用します。ハード面においても、受水槽の残水利用や非常用コンセントの位置確認を事前に行っておくことで、有事の際もパニックに陥らずに対応できるはずです。
立派なBCPマニュアルを策定したとしても、職員がその内容を理解していなければ現場で機能させることはできません。机上訓練やシミュレーションを定期的に実施し、職員一人ひとりが自分の役割を認識することが、形骸化を防ぐ唯一の方法といえます。夜間の火災や大規模地震など、より過酷な条件での避難誘導訓練を行うことで、計画の不備が見つかることもあるでしょう。訓練の結果を受けてマニュアルを継続的にブラッシュアップし、PDCAサイクルを回し続ける姿勢が重要です。こうした日々の積み重ねが、いざという時の対応力の差となって現れることになります。
介護業界におけるBCP対策は、単なる行政上の義務化への対応ではなく、利用者と職員の命を守り、地域インフラとしての機能を維持するために不可欠なものです。自然災害や感染症はいつ発生するか予測できません。事例を参考に自施設の課題を洗い出し、現場で動ける「生きたBCP」を構築していきましょう。定期的な訓練と見直しを繰り返すことが、有事の際の実効性を高める道となります。
BCPツールは、災害発生時に早期復旧できるような仕組みづくり・体制づくりに役立ちます。とはいえ「いろんな種類がありすぎて選べない!」という方も多いでしょう。ここでは、おすすめのBCPツールを3つの目的別にご紹介します。導入を検討している方は、自社の目的と照らし合わせながらチェックしてみてください。

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