災害時においても、小売業は地域のライフラインとして事業継続が重要です。しかし、サプライチェーンの寸断や従業員の不足といった、特有のリスクも抱えています。本記事では、小売業界のBCP対策事例と、事業を止めないための重要ポイントを解説します。
全国に1,300を超えるドラッグストア・調剤薬局を展開するココカラファインは、広域にわたる店舗網ゆえの課題を抱えていました。災害発生時、各店舗からの情報をボトムアップで集約し、本部が状況を把握して初動対応の指示を出すまでに時間がかかっていたのです。そこで同社は「Bois(防災情報提供サービス)」を導入しました。
このシステムにより、各店舗の立地に伴うハザードマップ情報や、発災時の災害アラートが本部に集約され、一元管理が可能になりました。結果として、本部がリアルタイムで被害状況を把握し、迅速なトップダウンの指示を出せる体制が整い、地域医療を支える店舗の早期復旧に貢献しています。
関東地方を中心にスーパーマーケットを展開するベルクでは、従来の安否確認システムが正社員のみを対象としており、パートやアルバイトを含む全従業員約1万5千人の状況把握が困難でした。また、収集した安否情報を手作業で集計するプロセスは、災害対策本部の大きな負担となっていたのです。
この課題を解決するため、同社は「安否確認サービス2」を導入しました。これにより、雇用形態に関わらず全従業員を対象とした安否確認が可能になっただけでなく、集計作業の自動化も実現しています。災害時の初動対応で最も重要な「人員の把握」を迅速化し、早期の店舗運営再開に向けた体制を整備した好例といえるでしょう。
ホームファニシング大手のニトリでは、災害発生時における「第一報」の遅れが深刻な課題でした。現場スタッフが上司を経て役員まで報告するプロセスには時間がかかり、心理的なハードルも高かったのです。そこで同社は「BCPortal」などの情報共有ツールを導入し、報告体制のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しました。
特に「上司は横槍を入れない」というルールを徹底し、正確性よりもスピードを最優先する文化を醸成しています。この取り組みにより、現場からの情報が迅速に経営層へ届くようになり、熊本地震が発生した際も、スピーディーな復旧対応に大きく貢献しました。
青果卸売グループのR&Cホールディングスは、2019年の台風19号での被災を機に、BCP対策として安否確認システムの導入を決定しました。従来のツリー状連絡網では情報収集が困難だったため、双方向の連絡が可能な「オクレンジャー」を採用。
コストや安定性も評価しましたが、最大の決め手は「平時の使い勝手の良さ」でした。災害時に確実に使うためには「使い慣れる」ことが重要と考えたためです。導入後は、局地的な大雨時の安否確認やドライバーへの注意喚起に活用するほか、平時も慶弔連絡やグループ内の情報共有ツールとして利用し、効果を上げています。
小売業にとって、顧客に商品を届けるための「商品供給」はまさに生命線です。しかし、特定の仕入先や単一の物流センターに依存していると、その拠点が被災した場合、全店舗への商品供給がストップしてしまう深刻なリスクを抱えることになります。
このような事態を避けるため、BCP対策ではサプライチェーンの強靭化が不可欠です。具体的な対策としては、主要商品の仕入先を複数確保しておくことや、国内調達と海外調達のバランスを取るなどの「分散調達」が挙げられます。
また、在庫を保管する物流拠点も一箇所に集中させず、地理的に離れた複数の拠点に分散させることで、万が一のリスクに備えることが重要です。
どれだけ物流が機能していても、店舗を運営する「人」がいなければ事業は継続できません。BCPにおける最優先事項の一つは、従業員の安全確保です。災害発生時に、全従業員の安否を迅速かつ確実に確認できるシステムの導入は、今や必須の対策となっています。
安否が確認できた後、次に重要になるのが人員配置です。小売業は多店舗展開が多いため、被害が大きかった店舗や人員が不足している店舗に対し、近隣の被害が少ない店舗からスタッフを派遣する「店舗間応援体制」のルールを平時から整備しておく必要があります。
さらに、レジ担当者も品出しができるようにするなど、スタッフの多能工化(マルチタスク化)を進めておくことも、少ない人数で店舗を運営するために有効な手段です。
災害時には、停電や通信障害が高頻度で発生します。これらは、現代の店舗運営に欠かせないPOSレジやキャッシュレス決済システムを直撃し、営業継続を困難にします。対策として、ポータブル電源や小規模な発電機などの予備電源を確保し、少なくともレジ1台と最低限の照明を維持できる体制を整えることが重要です。
また、決済システムが完全に停止した場合に備え、手書き伝票による販売オペレーションや、釣銭用の現金を多めに確保しておくといったアナログな準備も有効でしょう。加えて、臨時休業や営業時間の変更、在庫状況といった重要な情報を顧客へ迅速に伝えるため、公式ウェブサイトだけでなく、SNSやLINE公式アカウントなど、複数の情報発信チャネルを準備しておくことも顧客の混乱を防ぐ上で不可欠です。
小売業界におけるBCP対策は、単に自社の損失を防ぐだけでなく、地域のライフラインを維持するという社会的な使命を果たすためにも不可欠です。災害はいつ起こるかわかりません。本記事で紹介した事例を参考に、まずは「サプライチェーンの維持」「従業員の安全と連携体制」「店舗運営のバックアップ」の3つのポイントから、自社のBCP対策を見直し、強化を進めていきましょう。
BCPツールは、災害発生時に早期復旧できるような仕組みづくり・体制づくりに役立ちます。とはいえ「いろんな種類がありすぎて選べない!」という方も多いでしょう。ここでは、おすすめのBCPツールを3つの目的別にご紹介します。導入を検討している方は、自社の目的と照らし合わせながらチェックしてみてください。

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