自然災害や事故による物流の停止は、社会や企業活動に大きな影響を及ぼします。運送業界では、業務を中断させずに継続するためのBCP(事業継続計画)が欠かせません。本記事では、実際の事例とともに効果的な対策のポイントをご紹介します。
ASKUL LOGISTは、法人向け通販サービスASKULや個人向け通販サービスLOHACOの物流を担う企業です。東日本大震災の経験や自然災害の増加を背景に、従来の電話連絡網だけでは限界があると判断し、 安否確認サービス「オクレンジャー」を導入しました。スマートフォンやガラケーに対応し、セキュリティ面も配慮された同サービスにより、緊急時の速やかな安否確認や情報共有が可能となりました。実際に大規模地震発生時には、深夜でも配信により従業員の安否を迅速に把握し、経営層へ正確な報告を行うことで事業継続と早期復旧に貢献。今後は全国拠点への展開を進め、さらなるBCP強化を目指しています。
物流会社B社では、2021年の西日本豪雨で九州拠点が浸水被害を受けたことを契機に、自然災害リスクへの対策を経営課題と位置付けました。従来は報道やインターネットから手作業で情報収集をしていましたが、限界があると判断し、災害情報をリアルタイムに“見える化”できる「Spectee Pro」を導入。物流拠点を登録し、気象データやハザードマップを重ね合わせることで、被害予測や荷物・設備の移動判断を可能にしています。導入後は、災害発生時の状況を立体的に把握でき、迅速かつ適切な対応につながりました。今後は配車管理や動態管理システムと連携し、より高度な物流リスク管理へ発展させる計画です。
阪神大震災を契機に物流業における事業継続の重要性を認識し、BCP策定に取り組んできました。商工会議所や専門家と複数の計画を作成し、それらを 「事業継続力強化計画」として一本化することで、実効性あるBCPを確立。国の認定を受けたことで荷主からの信頼も高まりました。具体的な対策としては、発電機の導入や情報のクラウド化、安否確認システムの整備、保険加入に加え、燃料供給契約や車両部品の互換性確保など、事業継続を支える体制を構築しています。また、災害時には水や救援機材の提供、トラックによるがれき撤去などを通じて地域社会にも貢献。「何かあれば頼れる存在」となることを目指し、自社BCPを基盤に防災・減災に取り組んでいます。
東日本大震災での支援物資輸送をきっかけに、物流がライフラインとして果たす役割を強く認識しました。2018年の台風21号では停電により4~5日間業務が停止した経験から、電源確保の重要性を痛感。専用の非常用電源の代替として、業務用フォークリフトを非常時の電源として兼用する取り組みを進めています。また、防災意識を根付かせるために社内教育映像を制作し、新入社員研修に活用。さらに、関西国際空港やホームセンター、同業他社と緊急輸送や相互支援の協定を結び、物資搬送・人員派遣・燃料や電源の融通など、災害発生時の協力体制を構築しています。これにより、物流の継続と地域インフラ復旧を支える体制を強化しています。
効果的なBCPを策定するには、災害発生時にどの業務がどの程度の影響を受けるかをあらかじめ把握しておく必要があります。 業務影響分析(BIA)を実施すれば、優先的に復旧すべき業務や許容可能な停止時間を整理できます。その結果、復旧に要する時間を短縮し、重要な顧客や取引先への影響を軽減することが可能です。事前に業務を可視化しておくことは、計画の実効性を高める重要な要素です。
災害発生時に業務を継続するには、正確な情報をいかに早く入手できるかが大きなポイントです。ドライバーや拠点間での情報共有を円滑に行うため、専用システムを導入する企業も増えています。 最新情報を集約し、社内でリアルタイムに共有することで、状況判断を迅速に行えます。情報伝達が滞れば混乱が拡大するため、通信手段や情報基盤の整備は欠かせません。
倉庫や配送センターが被災すると物流全体が停滞します。そのため、複数拠点を持つ体制や 代替輸送ルートの確保が不可欠です。建物の耐震化や非常用電源の設置を行うことで拠点の強靭性を高めると同時に、緊急時には他の拠点やルートを活用できる準備を進めることが重要です。このような備えにより、想定外の事態でも一定水準の物流を維持できます。
災害時に業務を止めないためには、人材の柔軟な配置が求められます。普段から業務の標準化を行い、 社員が複数の作業を担当できるよう教育しておくことで、担当者不在でも業務の継続が可能です。さらに、荷主との交流を通じて相互支援体制を整えておくと、人員の不足を補うことができます。人的リソースの多能化と協力体制は、危機に強い組織をつくるための大切な基盤です。
災害直後に社員や関係者の安否を確認できなければ、業務再開は大きく遅れます。そのため、 安否確認システムやSNSを活用した複数の連絡手段を準備しておくことが効果的です。連絡網を平時から整備しておけば、混乱の中でも確実に必要な情報を届けられます。迅速な連絡ができる環境は、業務復旧のスピードを大きく左右します。
車両を稼働させるためには、燃料や電力の供給を安定させることが必須です。 燃料供給業者と優先契約を結ぶ、あるいは自家発電設備を整備するなどの取り組みが行われています。こうした備えは非常時に物流を継続する力を高めます。エネルギー確保を軽視すると、災害時には輸送が完全に停止してしまう可能性があるため、事前の対策が重要です。
物流を担う運送会社だけでなく、荷主企業と協力してBCPを策定することも大切です。 連絡体制や優先的な輸送業務を共有し、共同で訓練を実施することで、緊急時の対応力が高まります。国土交通省も荷主と事業者が一体となったBCPの整備を推奨しています。共通認識を持つことが、継続的な信頼関係を築くための土台となるのです。
運送業界にとってBCPは、企業活動を守るだけでなく社会インフラを支える責任を果たすためにも欠かせないものです。地域社会との協力、情報基盤やエネルギーの備え、人材育成、そして荷主との共創が揃って初めて強靭な体制が整います。災害時に物流を止めないという使命を果たすためには、日常から計画的に準備を進めておくことが不可欠です。
BCPツールは、災害発生時に早期復旧できるような仕組みづくり・体制づくりに役立ちます。とはいえ「いろんな種類がありすぎて選べない!」という方も多いでしょう。ここでは、おすすめのBCPツールを3つの目的別にご紹介します。導入を検討している方は、自社の目的と照らし合わせながらチェックしてみてください。

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