多様なリスクに直面する現代、観光事業者の危機管理は地域経済を守る重要な責務です。不測の事態でも顧客の安全を確保し、事業を継続させる「BCP」策定のポイントと、事例を紹介します。
鉄道や宿泊、レジャーなど多角的な事業を持つ大手観光インフラ企業は、災害時の迅速な復旧判断に課題を抱えていました。そこで「BCP-PREP」を導入し、各拠点の重要事業を一元管理できる体制を構築。これにより、混乱時でも状況を即座に共有し、優先すべきサービスの特定と適切な顧客案内を可能にしました。多業態ゆえの情報集約の難しさをITで解決し、組織全体の対応力を高めた観光BCPの事例です。
26,000人を擁する株式会社LEOCは、人力での安否確認の限界と取引先からの要望を受け「安否確認サービス2」を導入。最大の壁は従業員の7割を占めるパート層への浸透でしたが、丁寧なフォローにより、ITに不慣れな層を含む全社的な登録を実現しました。 人事システムとの連携でコストを抑えつつ、能登半島地震では自動送信により休日でも迅速な初動対応に成功。人命と事業所の状況を同時に把握できる、実効性の高い体制を構築した事例です。
JTBグループは、東日本大震災を機に「動けるBCP」への転換を図りました。単なる文書整備から脱却し、台本なしの実戦的な訓練を重ねることで、組織的な対応力を強化しています。具体的には、首都圏被災に備えた大阪への本社機能移設や、ITシステムの二重化を完備。さらに、コールセンターを熊本、財務機能を札幌に分散配置し、有事でも事業を止めない体制を構築しました。「旅の安全」を守るだけでなく、災害時には復興を支えるインフラとしての役割を担うべく、旅行業界全体のレジリエンス向上を牽引しています。
北海道函館市の五稜郭タワー株式会社は、有珠山噴火や北海道胆振東部地震などの経験を経て、実効性の高い事業継続体制を構築しています。不測の事態でも雇用を維持するため、約10億円の現預金を確保。経営面では通年雇用への切り替えやSNSによる情報共有を実践し、組織の対応力を高めてきました。さらに自家発電機の導入や、多様なリスクを想定したBCPの策定、取引先との連携強化など、具体的な対策を講じています。一連の取り組みが、災害時における組織の迅速な初動を支える基盤となっています。
アパホテルでは、以前は災害時の安否確認には電話を用いていましたが、時間と手間がかかることや回答率が低いという課題がありました。システムに不慣れな従業員もおり、安否確認システムを導入したとしてもなかなか活用ができないのでは、という懸念がありました。
そこで同社は、災害発生時に自動で安否確認が行われる「安否確認サービス2」を導入。このサービスを導入するにあたって、改めて役割を明確にし、情報共有の仕方についてルール化を行っています。
その結果サービス導入後に地震が発生した際には、安否確認を1時間で完了することができました。これまで人力で行っていた安否確認対象者の抽出と連絡が自動化できたことによって、対応スピードと正確性が向上。さらに回答の集計も自動で行われるといったように、災害時にも迅速に対応ができる体制の構築につながっています。
観光施設においては、何よりもまずお客様の安全を最優先に確保する計画を策定することが求められます。地震や津波などの緊急事態において迅速に避難誘導を行うことは当然ですが、交通インフラが停止した際を見越した「滞在支援」の視点も観光業特有の重要なポイントです。
具体的には、帰宅困難となった方々のために安全な滞在場所を提供し、備蓄された食料や飲料水を用意しておく体制を整えます。このような真摯な対応は、単なる危機管理に留まらず、将来的に「安心・安全な観光施設」としてのブランド価値を高める礎になるでしょう。
観光産業はメディア報道やインターネット上の情報による風評被害を受けやすいという特性を持っています。被災地から離れていても「周辺地域も危ない」という誤解が広まれば、予約のキャンセルが相次ぎ、経営に深刻な影響を及ぼしかねません。
こうした事態を防ぐためには、自社のウェブサイトやSNSを通じて、正確な現状や営業再開に向けた見通しを迅速に発信し続けることが不可欠です。情報の不透明さからくる不安を解消する努力を怠らないことが、顧客の信頼を維持し、予約の極端な減少を食い止める鍵となります。
災害時には売上の激減が予想されるため、財務面での具体的な対策を練っておくことが事業継続には不可欠といえます。事業が中断した場合の損失額をあらかじめ試算しておき、一定期間の現預金を保持しておくことが推奨されています。
金融機関への早期の報告や相談に加え、加入している損害保険の補償内容を確認し、迅速な保険金請求ができる体制を整えておくことも重要です。こうした事前の財務計画により、キャッシュフローの途絶による経営破綻のリスクを最小限に抑えることが期待できます。
観光業を支える最大の経営資源は「人」であり、災害時の雇用不安は優秀なスタッフの離職を招く大きなリスクを孕んでいます。BCPを策定する際には、休業中であっても従業員の生活を守るための給与支払い方針を具体的に定めておくべきです。
経営者が早期に雇用維持の強いメッセージを発信することは、従業員の安心感や結束力を高める大きな力となります。従業員の生活を守る姿勢を明確にすることは、復興を支える貴重な人材の流出を防ぎ、営業再開後の安定的な事業運営を可能にするための重要な戦略です。
増加する訪日外国人観光客を受け入れている施設では、言語の壁を考慮した情報提供と支援体制の強化が急務となっています。過去の震災時においても、多くのインバウンド旅行者が情報不足から困惑したという事例が報告されています。
パニックを避けるためには、翻訳ソフトの活用や、視覚的に理解しやすい図記号を用いた案内掲示など、国籍を問わず状況を把握できる仕組みをBCPに組み込んでおく必要があります。多様な文化背景を持つお客様が孤立しないよう配慮することは、国際的な観光地としての責任を果たすことにつながります。
BCPは有事の際、施設や地域を守り抜くための「羅針盤」となります。観光業特有の課題に対応した計画を事前に用意することで、不測の事態においても迅速な判断と行動が可能になるでしょう。単なる書類の作成に留めるのではなく、継続的な訓練を通じて持続可能な観光経営を実現するための第一歩となります。
BCPツールは、災害発生時に早期復旧できるような仕組みづくり・体制づくりに役立ちます。とはいえ「いろんな種類がありすぎて選べない!」という方も多いでしょう。ここでは、おすすめのBCPツールを3つの目的別にご紹介します。導入を検討している方は、自社の目的と照らし合わせながらチェックしてみてください。

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